デンタルニュース

2026.7月 進化の歴史から見る「親知らず」の不思議

昔の人類にとっては必要な歯だった!?

親知らずは、前歯の真ん中の歯から数えて8番目の歯で、一般的に18歳頃生えてくる歯です。上下左右に1本ずつ、計4本あります。トラブルの原因になることが多いため、「不要な歯」と思われがちですが、実は人類の進化の歴史をたどると、親知らずには重要な役割がありました。

数百万年前の人類の祖先は、現在のような柔らかい食事ではなく、硬い木の実や根菜、繊維質の多い植物などを食べていました。そのため、食べ物をしっかりすり潰すための大きな奥歯が必要でした。

親知らずはその役割を担う大切な歯であり、当時の大きなあごには十分なスペースもありました。

脳の発達で「あご」が小さくなった

人類は進化の過程で脳が大きく発達しました。その結果、頭蓋骨の形が変化し、顔やあごは以前よりコンパクトになりました。一方で、歯の本数は昔と変わらず32本のままです。つまり、「歯の数はそのままなのに、あごだけ小さくなった」という状態になりました。これが、現代人に親知らずの生えるスペースが不足しやすい理由です。

さらに、人類は火を使った調理や食材の加工を行うようになり、硬い食べ物を長時間噛む必要が少なくなりました。その結果、あごの発達に必要な刺激も減り、親知らずの役割は次第に小さくなっていったと考えられています。

実際に、生まれつき親知らずがない方もいます。それなら将来的に親知らずはなくなってしまうのでは?と思われるかもしれません。親知らずのトラブルは10代後半から20代以降に起こることが多くあります。一方で、人類の進化は主に「子孫を残せるかどうか」によって進むため、親知らずによる問題があっても、それだけで子孫を残せなくなるわけではありません。そのため、進化の過程で親知らずが完全になくなるほどの強い淘汰は起こらなかったと考えられています。進化と歯の関係を考えると、とても興味深いですね。

抜くべきか抜かぬべきか…

親知らずが生えていても、「まっすぐ生えている」「しっかり清掃できる」「痛みや炎症などのトラブルがない」場合は、必ずしも抜歯が必要とは限りません。一方で、「横向きに生えている」「炎症を繰り返す」「歯ブラシが届きにくく清掃が難しい」場合には、抜歯をおすすめすします。親知らずの周囲は汚れがたまりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まるだけでなく、手前の健康な歯に悪影響を及ぼすこともあるからです。また、生え方によっては歯並びに影響を与えたり、噛み合わせのバランスが崩れることで顎関節に負担がかかったりする場合もあります。

親知らずの生え方や状態は人それぞれです。大切な予定の直前に突然炎症を起こしたり、症状が出てからでは治療が大変になったりすることもあります。気になる症状がある方や、ご自身の親知らずの状態を知りたい方は、お気軽にご相談ください。

ページトップへ